今昔物語

南足柄の名水ものがたり その1

苅野弁天さんの湧水

足柄神社の参道近く、県道78号線から少し入った場所にコンコンと水が湧く池があります。池には伝説が伝わっています。昔、ある夏の日、旅の僧が村の老婆に1杯の水を所望しました。老婆は暑さに汗だらけの僧を気の毒に思い水を汲みに行きました。ところが水を汲みに行った老婆はなかなか帰ってきません。僧が疑問に思っているとやっと老婆が手桶を下げて帰ってきました。僧はありがたく水を飲みました。気づくと老婆が汗まみれだったので僧が訳を聞くと村には井戸がなく、遠く離れた小川まで水を汲みに行ったとのことでした。僧は水のお礼にと屋敷の隅に錫杖(しゃくじょう)を突き刺すとお経を唱え始めました。お経を唱え終わると僧は錫杖を引き抜きました。すると水が勢いよく湧き出しました。なんと旅の僧は弘法大師だったのでした。湧き水は「弘法の突き水」と呼ばれ、村人は池の中に弁財天を祀り、今も大切にしています。※諸説あります。